柏さんのところでは、種付けして肉用子牛を販売しています。それはいつからでしょうか。 |
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祖父の代からですが、その時はまだ細々と。仕事として本格的に始めたのは私の父で、繁殖用の牛50頭ほどと、肥育用に黒毛和牛とホルスタインを交雑させた牛を飼っていました。 |
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小さい頃から牛が身近にいたわけですから、いずれは自分もと思っておられた? |
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いや、それはありませんでした。高校が終わってからは技術系の専門学校にいって、その後は自動車の整備士として26歳の時まで働きました。 |
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就農を意識し始めたのは? |
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26歳で会社を辞めて、この道に入ったのですが、その1年ほど前のことです。太陽の下で働きたいと思うようになりました。 |
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太陽の下で。 |
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一日中、整備工場の中で仕事をしていたら太陽が恋しくなったのです。牛の世話は基本的には牛舎の中、屋根の下で行いますが、牧草の栽培・刈り入れは大空のもと、自然に包まれて行うので、そちらをメインに手伝おうと思ったのです。機械の操作も好きでしたし。 |
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でも牛の世話も、後にはメインに行うようになったのでしょう。ノウハウはどのようにして蓄積されてきたのか? |
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畜産関係の本を読んで、独学でやってきました。そしてわからないことがあったら、農協や県の畜産関係の機関の指導を仰いできました。でも実際にやり始めて、2人分の人件費が出ないのがわかって、僕がメインにやり出すようになってから、肥育の方は少し縮小し、繁殖牛の方に力を入れて、平成19年、20年と設備投資して倍の頭数にしました。 |
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子牛1頭はいくらで販売されていくのか? |
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最近の相場は43〜44万円。年間だいたい100頭の子牛を出荷しています。設備投資したころの相場は、今より10万円ほど高くて1頭53〜54万円でした。その牛が、それぞれの産地に行って、その産地独特の飼い方によって○○牛とかのブランド名のついた牛肉になるわけです。 |
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主な販売先は? |
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飛騨高山と北陸三県和子牛市場をメインに、他に松阪、伊賀です。 |
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いい子牛ってどういうものなのでしょうか? |
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病気をせず、よくエサを食べる。元気で食の太い子牛は、大きく育って肉付きもよくなるようです。子牛を買っていただく農家のオーナーと時々話しますが、「あんたのところの牛はエサをよく食う」と満足していただいています。 |
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子牛の販売の他に、売り上げは。 |
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一部肉用の肥育牛の販売があります。 |
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子牛の取引相場の下落によって1000万円程度の売り上げダウンになっている。もっと頭数を増やすとかの対策は? |
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牛舎の広さから見て、頭数は今が限界です。親牛・子牛合わせて240頭くらいはいますから。増やすのだったら牛舎を建てないといけないけど、相場が低迷している今は設備投資の時ではありません。やるとしたら肥育して、肉用の牛を売っていくことではないかと思います。 |
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2007年に行われた全国和牛能力共進会では、枝肉の部(第9区去勢肥育牛)に牛2頭を出品され、2頭とも優等賞を受賞されていますね。 |
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おかげさまで。出品した2頭の平均値を全国平均と比べると、肉の量で35kg多い692kg、1頭当たりでは9万5千円高い160万円で、いずれも格付けの高いA5でした。(*全国和牛能力共進会=全国和牛登録協会が主催して、5年に1度、全国持ち回りで開催されている和牛(黒毛和種)の品評会。和牛のオリンピックとも称される。2007年は鳥取県で開催された。) |
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先ほどいわれた、元気な子牛はよく食べて太る。その結果がこうだということか。 |
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まあそんなところです。 |
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元気かどうかは、どこで判断するのか。 |
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まずは顔つき。調子が悪かったら顔に生気がない。生気がないということは病気かもしれない。そしてエサを運んでいった時に、普通に元気な牛はさっと寄ってくる。ところが、どこか調子の悪い牛は寄ってこない。そうやって調子の悪い牛を早く見つけ出して、病気の場合はすぐに治療していきます。ほかにストレスがかからないように、妊娠牛は冬以外、放牧してやります。また牛舎にいる時も、たまにラジオを聞かせる。聞かせるというより音に慣れさせて、些細な物音でびっくりしないようにしています。 |
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毎日牛を見ていたら、息抜きができないのでは? |
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何日も連泊しての旅行は難しいですが……。でも今度、馬を飼い始めました。サラブレッド。牛舎ではなく、自宅で飼っています。いずれ馬に乗って散歩に出かけます。 |
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■現在の経営状況
飼養頭数
繁殖用牛 110頭
子牛 101頭
肥育牛 8頭
経営面積
飼料作物 12ha
WCS収穫作業受託 17ha
放牧 16ha |