わたしの体験談
分業制から一貫生産に変えてみました
氏 名
年 齢
就農地
就農年次
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森川 明浩(もりかわ あきひろ)
39歳
立山町
平成20年
【自家就農】
— 子どもの頃から、家業としての畜産を身近で見てきたわけですから、はやくから家業を継ぐ意識は持っていたのですか?
特にそれはありませんでした。私は長男で、一般的には後継者として期待されそうなものです。父はそう思っていたのかもしれませんが、表立って強く勧めることはありませんでした。
— では、就農を意識するようになったきっかけは?
「農業はもうからない」と、子どもの頃からよく聞いていました。そのたびに、「だったらもうかるようなやり方でやったらいいのに……」と思っていました。学卒後、私はある企業で営業として働くようになりましたが、営業としての経験を積めば積むほどその思いが強くなったのです。それで自分で畜産に携わって、経営改善に取り組んでみたいと思い、30歳の時に就農しました。
— 一般的には、知人の畜産農家で修業するとかしますが……。
畜産の技術に関しては、おいおい勉強していったらいいと割り切っていました。ですから就農してすぐに、畜産関係の専門書を買って少しずつ読み始めました。それと同時に、私は経営上の数字を把握することに努めました。
— 何かわかったことは?
当時の状況での、もうからない要因のひとつは、子牛の値段が高いことでした。畜産といっても繁殖して子牛の販売をメインにする人(繁殖農家)と、子牛を買ってきて、肥育して肉牛を販売する人(肥育農家)というふうに分業化されていますが、子牛の値段が高いと肥育農家は利益の確保が難しくなります。元々、肥育の畜産を行っていたのですが、私が就農してからは一貫生産に変えました。
— 経営状況は変わりましたか。
以前は平均80頭の牛を飼っていましたが、今は子牛も含めて180頭ほどいます。売上げは2倍強になりました。私が新しく入った分の経費を差し引いても、経営状態は格段に良くなりました。
— 一貫生産のメリットは他にもありますか。
子牛が生まれてから出荷するまでの全てを管理できるところから、肉牛としての安心安全が確保されます。また子牛を買って牛舎に移送するというのは、子牛に結構ストレスをかけるものです。それは肉によい影響を与えるものではありませんから、一貫生産でそのストレスがなくなった点もよかったと思います。
— 就農して8年ほどになりますが、感想は?
子牛や枝肉の相場、そして私が一貫生産に取り組んでみたいと思ったタイミング、これらがうまく回ったため、だいたい予想どうりになってきました。その意味ではやりがいのある楽しい8年でした。TPPをはじめ、農業や畜産を取り巻く環境は年々変化するものですが、それらにどう対処していくかが楽しみでもあります。製造業の世界では、そういう厳しい競争に何十年もさらされています。
— 今後、何か新しいことに挑戦してみたいと思うことはありますか。
肉を販売するためのお店を持ちたいと思っています。今は農協に卸して食品スーパーなどで販売していただいていますが、直営店で販売してお客様の反応なども確かめたいと思います。また、直販することは、利益率を改善することにもつながります。お店を持つことに関しては、5年先、10年先のことになるかもしれませんが、いずれは取り組んでみたいと思っています。