「農業って奥が深い」と実感しています

氏 名
年 齢
就農地
就農年次




北島 雅志(きたじま まさし)

28歳
富山市
平成20年

【自家就業】

— こちらの経営概要を教えてください。

 施設園芸37a、露地野菜20aのほか水稲が5haです。施設園芸では園芸店向けの野菜苗、大玉トマト、小松菜、オータムポエム、そして抑制栽培のミニトマトとキュウリを、露地ではナスを栽培しています。抑制キュウリは購入苗を利用しますが、その他はここで播種して、接ぎ木苗も自分たちでつくっています。これを私と両親の3人を中心に、5人のパートの方で生産しています。

— 就農までの経緯は?

 父が高校の農業科を出て、専業として施設園芸を中心に農業経営を行っていました。子どもの頃から田んぼやハウスで働く父の背中を見てきましたが、まさか自分が就農するとは思ってもいませんでした。中学卒業後は高専で化学を専攻し、専門性を生かした仕事に就きたいと思っていましたが、仕事になじめず、半年で辞めました。その後、アルバイトで農業を手伝いながら、飲食店を持つために専門学校に入る準備をしました。両親がつくった野菜を自分の店で調理して出すのもいいだろうと思ったのです。ところがしばらくして結婚を意識するようになり、仕事をきちんとしようと思って、就農することにしました。

— 両親の働く姿を子どもの頃から見ていたわけですから、違和感なく入れたのですか。

 就農するまでは、「農業って簡単」と、侮っていた点があったと思います。以前、私がアルバイトで経験していたのは作業の一部で、栽培管理や収穫などに関するものではありませんでした。管理が適切に行われていないと、収量や品質に大きく影響するのを知ったのは就農してからです。それがわかって、「農業って奥が深い」と実感しました。

— 就農して6年ですが、どうですか?

 大体は1人でできるようになりました。接ぎ木の作業やわき芽の摘み取りなどは、ここでは誰よりも速くできます。高専時代に学んだ化学の知識が、施肥の際に役立つこともあります。ただ、ハウス内の気温や肥料の混合割合など、状況に応じて調整が必要な点に関しては、父には及びません。そういう意味ではまだ一人前ではないようです。失敗して、へこむこともありますが、保育所から帰ってきた娘がハウスで遊んでいるのを見るとほっとします。当園では、娘が通っている保育所に野菜苗と花苗を提供していますが、定植の際「この苗は北島さんのお父さんが育てたものだよ」と他の園児に紹介していただいているようで、それを聞いて胸があつくなったこともあります。

— 将来の目標は?

 法人化して会社経営の視点を入れることを考えていて、パートの方には安心して長く勤めていただけるようにしたい。その上で、作業の責任者を決めて熟練度も高めていきたいと思っています。父は、規模の拡大を目標にしてきたところがありますが、私は経営内容の充実、品質向上に力を入れたい。当園のトマトは、父の栽培管理によって糖度が高く、皮があまり硬くないので人気が高いのですが、そういうお客様から人気のある農産物を増やしたいと思います。また販売についても意識を持たなければいけないと痛感していて、ホームページでの販売も課題だと思っています。

— 就農を考えている方にアドバイスを。

 農業に接したことのない方は、農業法人での研修などがありますから、それを事前に経験されることをお勧めします。私のような自家就農の場合も、修業の意味も含めて「他所の飯を食べ」た方がいいかもしれません。