とやまの漁業について
主な漁業種類
富山湾は、日本海側のほぼ中央に位置する外洋性の内湾です。海岸線の長さは短く、大陸棚の面積も狭いですが、岸から10~20km進むと水深1,000~2,000mとなる深い湾です。河川水の影響による塩分濃度の低い沿岸表層水、湾内に流入する対馬暖流水、水深300mより深いところにある日本海固有水(海洋深層水)が3層構造になっていて、暖流性と冷水性、深海性の魚が約500種類も生息しています。
富山湾には「あいがめ」と呼ばれる16の海底谷があって、古くからこの海底地形を利用した定置網漁業が行われてきました。現在、湾内には130の定置網が設置されていて、対馬暖流系の回遊性魚類(ブリ類、イワシ類、スルメイカ等)やホタルイカを漁獲しています。定置網漁業以外では、小型底びき網漁業で主にシロエビなど、かごなわ漁業でベニズワイガニやバイ類などを漁獲しています。
定置網漁業
- 漁獲物
-
- ブリ類
- マグロ類
- イワシ類
- アジ類
- サバ類
- イカ類(ホタルイカ、スルメイカなど)
- タイ類
- フグ類
- ヒラメ
- カワハギ類
- サワラ など
漁港から数㎞沖合の「定位置」に仕掛けた網を毎朝起こし、入った魚を獲る漁法。
仕事
- ①漁港で船に乗り込み、夜明け前に出港し、約30分で漁場(定置網)に到着。
- ②2~3隻がそれぞれの持ち場に配置し、設置されている網を機械で巻上げる。
- ③網が巻上げ寄せられると、たくさんの魚が姿をみせはじめ、この魚を大きなタモ網ですくい上げる。
- ④すくった魚を十分な氷とともに船倉に入れ鮮度を保つ。この一連の網起こし作業は1~2時間で終了し、網を元の状態に仕掛けたら漁場を離れ、市場のある港へ。
- ⑤市場では魚種別・大きさ別に選別作業を行い、セリにかける。帰港後は、陸上で網の補修等を行うこともあるが、その場合でも1日の仕事は午前中に終了する。
定置網漁業のポイント
- 企業や網組が経営している場合が多く、未経験でも就職しやすい。
- 大型定置網は大規模な設備と多人数での網揚げや網の設置が必要で、個人で行うことはほとんど不可能。
- 海上での作業時間は比較的短い。
かごなわ漁業
- 漁獲物
-
- ベニズワイガニ
- トヤマエビ
- バイ
- ホッコクアカエビ(アマエビ)
かごに餌をつけ、ロープに連ねて深海に沈め、カニ類・エビ類・貝類が入るのを待つ漁法。考案したのは魚津市の漁業者。
仕事
- ①漁船にかご・ロープ・餌・氷・食料・飲料水を積み込み、富山湾沖合の漁場に向かう。出港時間は天候により一定ではない。
- ②漁場に着くと、周辺に他の漁具が入ってないか確認する。漁船を一定方向に走らせながら、幹縄に付けたかごの中に餌(サバなど)を取付け、船尾からかごを海中に沈め、幹縄を送り出す。
- ③最後に、錨・浮玉・目印の旗竿を投入して、入れかご作業を終了する。
- ④1〜数日後に船首から上げかご作業(入れかご作業の逆)により、漁獲物をかごから出し、残った餌を取り除く。漁獲物を氷で冷却し、船倉に保管する。
- ⑤上げかご作業が終了すれば、入れかご作業を行う。終了後、帰港し、漁獲物をセリにかける。
かごなわ漁業のポイント
- 富山県のベニズワイガニかごなわ漁業は、富山県漁業調整規則に基づく知事許可漁業。
- 漁期は9月1日から翌年5月31日まで。資源保護のために3ケ月間の禁漁期間がある。
- 雌カニは全面採捕禁止、雄カニは甲幅9cm以下の採捕が禁止され、資源を保護している。
- 操業の許可の制限条件は、操業水深が800m以深で、漁船の大きさや海域により、かご数、投入するはえなわの連数などが制限されている。
- かごの構造、大きさ、網目合も制限されている。
主な操業パターン(事例)
小型底びき網漁業
- 漁獲物
-
- シロエビ
- ホッコクアカエビ(アマエビ)
- ズワイガニ
- ゲンゲ
袋状の網を海に入れ、漁船で引っ張り、入った魚を水揚げする漁法。
仕事
- ①早朝に出港し、漁場に着いたら袋網を海に入れ、ロープを伸ばし、約1時間船で引く。
- ②ドラムでロープを巻き取り、網を甲板上に揚げる。網から漁獲物を出したら再度投網する。
- ③網を引いている間に先に獲れた漁獲物を選別する。
- ④この「投網→ひき網→揚網」という作業を数回繰り返す。
- ⑤市場のある港に漁獲物を水揚げして、1日の作業が終了する。
小型底びき網漁業のポイント
- シロエビ漁の漁期は4月1日〜11月30日。資源保護のため4カ月間の禁漁期間がある。
- シロエビの禁漁期間は、ズワイガニやホッコクアカエビ等を漁獲する。
- 漁業者間で一日の操業回数を決めて資源管理に取り組んでいる。
主な操業パターン(事例)
刺し網漁業
- 漁獲物
-
- ヒラメ
- キジハタ
- ガザミ
- アカガレイ
海中の魚の通り道に網を仕掛け、通過する魚をからませて獲る漁法。古くからある沿岸漁業の代表的な漁業。小型漁船で個人漁業者が多い。
仕事
- ①日の出前に出港し、前日に入れた網を揚げ、かかった魚を網から外し、市場へ出荷する。
- ②網に絡まった雑物を取り除き、漁具を点検する。
- ③午後から再び出港し、数カ所の漁場へ網を入れる。
刺し網漁業のポイント
- 刺し網漁業の規模はさまざまで、通常は1〜5トンの船に1〜2人が乗り、網を繰る。
- 刺し網の海底での位置・状態により、「固定刺し網」「こぎ刺し網」などがある。
- 使用できる漁場は漁業者間で調整され、狙う魚種により網目合の異なる網を使用し、潮・風により網の入れ方が変わる。
独立について
漁師は、就業のスタイルとして、①独立して漁業を営む「独立型」と②会社などに雇われて漁業に従事する「雇用型」があります。 独立を目指す場合も、まずは雇用されて漁業実績を積まなければ、独立して漁業を営むのは難しいです。
富山湾では、定置網漁業をはじめ、小型底びき網、かごなわ、刺し網漁業などが営まれ、限られた漁場が秩序よく利用されています。また、漁師は一般的に地元の漁業協同組合の組合員となって、一定のルールのもと漁業活動を行っています。
独立型を目指す場合には、それなりの資金や資格、漁労技術の習得が必要となりますが、こうした限られた漁場の利用を可能にするための経験を積むことが重要です。
富山湾では、定置網漁業をはじめ、小型底びき網、かごなわ、刺し網漁業などが営まれ、限られた漁場が秩序よく利用されています。また、漁師は一般的に地元の漁業協同組合の組合員となって、一定のルールのもと漁業活動を行っています。
独立型を目指す場合には、それなりの資金や資格、漁労技術の習得が必要となりますが、こうした限られた漁場の利用を可能にするための経験を積むことが重要です。