先輩就農者の声
先輩就農者の声
歴史あるぶどう園の未来を担う二人
現在の経営の概要を教えてください。
健さん:先々代が1927年に「やまふじぶどう園」を始めまして、その6年後にワインの醸造も始めました。富山で一番古いぶどう園であり、ワイナリーです。面積は6ha、生食用とワイン用の両方を育てていまして、全部で40品種、そのうちワイン用は4品種です。プラス、試験的にやってみているものもあります。
猛さん:今、特に力を入れているのは、「シャインマスカット」という品種。緑色のぶどうで、皮ごと食べれて種がなく、甘くておいしいんです。
お二人で一緒に作業されているのですか?
健さん:私が主にワインの担当で。
猛さん:私は、生食用。おおまかに役割分担しています。
就農したきっかけは?
猛さん:正直、結婚ですね。
健さん:家族経営でぶどう園をやっていたところに、娘が二人いまして。そこにそれぞれ、時期は違いますけれど、婿に入ったわけです。家業を継ぐことについて、特に葛藤のようなものはありませんでした。もともとぶどうに興味がありましたし、私は前職がパティシエで、それを活かせる職場だと思ったので。
猛さん:私は土木業をしていたんですが…。ぶどう園、楽しそうじゃないですか? おもしろそう、やってみたい! と思いました。
実際に農業をやってみて、どうでしたか?
猛さん:思ったとおり楽しかったですね。仕事ですからもちろん辛いこともありますけど、楽しいことのほうが多いです。
健さん:ワインに関して言えば、やはりなかなか思うようにいかないなというのが本音です。去年の経験や考えをもとにして取り組むんですが、狙い通りにいかないことが多々あります。たとえばケーキとかだと、何回も試作できますけど、ワインは一年に一回しかできない、言わばワンチャンスなので。難しい面はあります。
家族経営のメリット・デメリットは?
猛さん:やりやすいです。毎日家族会議で。あとは子どもがいるので、子どもと触れ合う時間が多いのもいいです。
健さん:私は、ちょっとオン・オフをつけづらいというところはありますね。住まいもここなので。朝起きて、まずひと仕事して、朝食を取ってまた仕事に戻って…という感じで。なかなか区切りがつけられないのが、難点と言えば難点です。
こだわり・モットーなどはありますか?
猛さん:とにかく、お客様に楽しんでいただけるようにと思って何事にも取り組んでいます。ぶどう狩りはもちろんですし、ぶどう園で、ライブや結婚式、バーベキューなども行っているんです。これからももっと工夫して、いろいろな企画を考えていきたいなと思っています。
健さん:私は、ここならではの粘土質の土地をワインで表現できたらと思っています。特徴的な土壌なので、味わいや風味に、そのあたりを出せたらと。
今後、新たに取り組んでみたいことはありますか?
猛さん:新しい、今注目されている品種なども栽培していきたいです。やっぱり常に新しい品種にはチャレンジしていきたいですね。
健さん:天然酵母を利用した、自然派ワインに取り組んでみたいと思っています。これはぶどうを発酵させる際、酵母メーカーが販売する培養酵母を使わずに、ぶどうにもともとついている天然の酵母を使って発酵させるというもので、ワインにより複雑な風味と味わいが生まれます。ただ天然酵母は培養酵母に比べて気まぐれで、発酵のタイミングやスピードが読みづらく、手間もかかるのですが…。挑戦してみたいことのひとつです。
これから就農を考えている方にメッセージを。
猛さん:とにかく楽しんでやることですね。何よりもまず、自分が楽しくなければ続けていけない。楽しいのが一番です!
健さん:そうですね。興味のあることはどんどんやってみてほしいです。もちろん大変なこともありますが、それだけ達成感もありますし、何より人の口に入るものですから。自分たちの作ったものでお客様を笑顔にできるって、うれしいものですよ。